2021-01-01から1年間の記事一覧

知的複眼思考法 苅谷剛彦 ①

本書は「自分の頭で考える」ための思考法の本です。 本書を読めば、次のようなことを学ぶことができます。 『自分なりの考えを、きちんと自分のことばで表現できるようになる。論理的に筋道の通った考えを展開することができる。人の意見を簡単に受け入れて…

すごい物理学入門 カルロ・ロヴェッリ ②

では、今回は量子力学です。 量子力学は1900年に誕生したと言われています。 著者の言葉を引用します。 『ドイツの物理学者であるマックス・プランクが、熱した箱の内部で安定した平衡状態にある光を計測しました。その際に、プランクはちょっとした工夫をし…

すごい物理学入門 カルロ・ロヴェッリ ①

本書は現代物理学について、あまり知識のない、または全く知らない人のために書かれた本です。 今まで物理学に縁のなかった人や、理解しようとしたけど挫折した人、そのような人にとって最初の一歩にしやすい、わかりやすい本です。 どんな学問でもそうです…

直感力を高める 数学脳の作り方 バーバラ・オークリー ④

では、今回は記憶力の高め方です。 何かを記憶するとき、私たちはただ単にその何かを写真を撮ったように記憶するのではなく、要約したり、抽象化したり、概念化したりします。 例えば本を読んだとして、後日それを思い出そうとするとき、文章の一行一行を覚…

直感力を高める 数学脳の作り方 ③ バーバラ・オークリー

直感力を高める、数学脳の作り方、バーバラ・オークリー著の紹介をします。 前回は「集中モード」と「拡散モード」の移行が重要だというお話をしました。 そして、その「集中モード」と「拡散モード」をスムーズに移行するコツは、脳が取り立てて考えないよ…

直感力を高める 数学脳の作り方 バーバラ・オークリー ②

イギリスの文豪であるチャールズ・ディケンズやジェイン・オースティンなど、または哲学者であるカントやルソー、ニーチェなど、創造的な仕事をした偉人は散歩を日課にしている人が多いです。 その散歩中に偉人たちは重要なアイデアや着想がひらめいたという…

直感力を高める 数学脳の作り方 バーバラ・オークリー ①

直感力を高める、数学脳の作り方 バーバラ・オークリー著の紹介をします。 本書は2014年にアメリカで発刊されると瞬く間にベストセラーになり、世界10か国以上で翻訳された本の訳書です。 原著の題名、「数字に強くなる考え方―数学と科学に抜きんでる法[た…

日本辺境論 内田樹 ④

では第四章、「辺境人は日本語とともに」です。 私たち日本人は物事を判断したり、行動したりするとき、何が正しいのかを論理的に考えて判断するよりも、「絶対的価値体」つまり、権力を持っている者や、物事をよく知っている者を探り当て、それに近づくこと…

日本辺境論 内田樹著 ③

では三章、「機」の思想です。 「機」の思想とは何でしょうか。 著者は武道と禅家における「機」の概念を取り上げています。 武道では澤庵禅師が「不動智神妙録」で「石火之機」という言葉を使っています。 『「石火之機」と申す事の候(……)石をハタとう打…

日本辺境論 内田樹著 ②

では二章、辺境人の「学び」は効率がいい、です。 一章で見たように、私たち日本人は辺境的性格を有しています。 古来から中国と言う中心があり、王化の光が同心円状にひろがっているので、その辺境にいる日本人はその光が届かない蕃国であるという宇宙観を…

日本辺境論 内田樹著 ①

本書は、日本とはどういう国なのか、日本人とはどのような特性を持った民族なのか、ということを「辺境」という補助線を引いて徹底的に論じた本です。 「辺境」とはどういう意味なのでしょうか。 それは「中央」というものがまずあって、それから遠く離れた…

カント 純粋理性批判 ③

次に「認識」を取り上げましょう。 私たちは「物自体」は認識できなく、「現象」のみ認識できるため、カントが「認識」と言うときには、その「認識」するための「認識」、「認識」の仕方のことを言っています。 つまり「超越論的認識」とは一体どういうもの…

カント 純粋理性批判 ②

さて、もう一度カントの「コペルニクス的転回」引用します。 『これまでは人は、すべて私たちの認識は対象に従わなければならないと想定した。しかし、こうして私たちの認識を拡張しようとする試みは、この前提の下ではすべて潰え去ったのである。そこで、対…

カント 純粋理性批判 ①

今回はカントの純粋理性批判を紹介したいと思います。 とはいっても、私は「純粋理性批判」を通読したことがありません。 手に取ったことがある人はわかるでしょうが、恐ろしく難解な書物であり、聞いたことのない用語が沢山出てきて、読み通すのはかなりの…

進化しすぎた脳 池谷裕二 ③

では第3章「人間はあいまいな記憶しか持てない」です。 まずはこのリストを見てください。 「苦い、砂糖、クッキー、食べる、おいしい、心、タルト、チョコレート、パイ、味、マーマレード、甘酸っぱい、ヌガー、イチゴ、はちみつ、プリン」 これらの単語を…

進化しすぎた脳 ②

第二章、「人間は脳の解釈から逃れられない」です。 さて、私たちは普通、世界という確固としたものがあって、それを解釈したり研究したりしている、と思っています。 人間とは関係なく、客観的な、それ自身で自立した世界というものが先にあって、私たちは…

進化しすぎた脳 池谷裕二 ①

脳の研究者の本を読んでいると、それは脳の構造だけにはとどまらず、意識とは何か、見ているとは本当に見ているといえるのか、心とは何なのか、といった心理学的、哲学的な考察まで思考が進んでいきます。 それは脳というものが視覚や意識や心や言葉などとい…

バカの壁 養老孟司 ④

次に社会の問題である「共同体」です。 著者は書いています。 「昨今は不況のせいで、どこの企業でもリストラが行われている。しかし、本当の共同体ならば、リストラということは許されないはずなのです。リストラは共同体からの排除になるのですから、よほ…

バカの壁 養老孟司 ③

このような「バカの壁」と密接に関係しており、そもそもその根本原因となっているのが「無意識」、「身体」、「共同体」である、と著者は言います。 『「意識と無意識」は脳の中の問題、「身体と脳」は個体の問題、そして「共同体」は社会の問題です。 現代…

バカの壁 養老孟司 ②

私たちは絶えず変化します。 情報を取得し、学び、身体を動かし、嫌な感情がわき、良い感情がわき、苦手だった人が好きになることもあるでしょう。 昨日できなかったことが、今日できるようになったりします。 そもそも私たちは変化するということがなければ…

バカの壁 養老孟司

大ベストセラーであり、発売された2003年の流行語にもなった「バカの壁」を今回は解説したいと思います。 まず、「バカの壁」とはどういう意味なのでしょうか。 おそらく多くの人が「バカの壁」から最初に受ける印象は、世の中には「賢い人」と「バカの人」…

使うと増える

世の道理である。 走って体力を使えば体力は増えるし、逆に一日中寝てばかりいれば、体力が減って毎日が疲れてばかりになる。 使ったら増えるし、使わなければ減ってしまう。 これはいろんなことに当てはまります。 例えば、いつもイライラしてる人がいると…

寝ながら学べる構造主義 内田樹 ⑥

四人目、ジャック・ラカンです。 ジャック・ラカンは著者も言っている通り、その書物の中でまったく何を言っているのかわからない箇所が沢山あります。 使っている用語が難しいというのももちろんあるのですが、意味をつかもうとしても人間嫌いの子猫のよう…

寝ながら学べる構造主義 内田樹 ⑤

三人目はレヴィ=ストロースです。 文化人類学者であるレヴィ=ストロースは「親族の基本構造」、「悲しき熱帯」、「野生の思考」といった書物を書いています。 レヴィ=ストロースは未開社会におけるフィールドワークを通して、重要な知見を示しました。 そ…

寝ながら学べる構造主義 内田樹 ④

では、四銃士の二人目はロラン・バルトです。 「バルトの仕事はまとめて「記号学」という名称のもとに包括することができます。」と著者は言います。 私たちは記号というのをいろんな意味として使っています。 2+2=4の+と=も記号ですし、「猫が顔を洗う」…

寝ながら学べる構造主義 内田樹 ③

では構造主義の四銃士の一人目、ミシェル・フーコーです。 ミシェル・フーコーも重要な著作を残しており、現代の知識人に与えた影響は膨大で、社会科学・人文科学の研究者では必読書となっています。 その著作は「監獄の誕生」、「狂気の歴史」、「知の考古…

寝ながら学べる構造主義 内田樹 ②

ソシュールは言語学者であり、1907年から1911年にかけて、スイスのジュネーヴ大学で、「一般言語学講義」という専門的な講義を行っていました。 彼の残した功績は多大なもので多岐にわたるのですが、構造主義にもたらした最も重要な知見を一つだけ挙げるなら…

寝ながら学べる構造主義 内田樹 

本書は難解な思想である構造主義を、できるだけわかりやすく「寝ながらでも学べるくらい」平易に解説した本です。 確かに構造主義と呼ばれている思想家の原著を読んで「頭がくらくらして頭痛がする」私でさえも、「なるほどな」と理解できます(これだけ平易…

下流志向 内田樹 ②

前回の続きです。 そこではお金の多寡だけが問題なのであって、誰がそれを使うかは誰も顧慮しない。 この時、社会的能力のほとんどない子供たちが、お小遣いを手にして消費主体として市場に登場したとき、彼らが最初に感じたのは法外な全能感だったはずであ…

下流志向 内田樹

本書は、なぜ若者たちは主体的に積極的に学びから逃走し、また労働から逃走するのか、それらから逃走するというのは帰結的に下流志向であるといえるが、なぜ下流志向の若者たちが増えたのか、どのような歴史的背景で生み出された現象なのか、それを考察した…