直感力を高める 数学脳の作り方 ③ バーバラ・オークリー

 直感力を高める、数学脳の作り方、バーバラ・オークリー著の紹介をします。

前回は「集中モード」と「拡散モード」の移行が重要だというお話をしました。

そして、その「集中モード」と「拡散モード」をスムーズに移行するコツは、脳が取り立てて考えないようになるまでべつのことをすることなのです。

その別のことは精神を集中しなければならないものではなく、散歩や掃除や運動などが良いということでした。

では今回は先延ばしを防ぐ方法です。

結論から言うと、先延ばしを防ぐ方法は3つあって、1つはやる気を出す方法、2つ目はポモドーロテクニック、3つ目はスケジュールを作る、です。

では一つ目やる気を出す方法です。

いつもと違って今日は気分が乗らない、という日はもちろんあるでしょう。

やる気が起こらない時も、勉強するのが憂鬱な時ももちろんあります。

特に苦手なことをやらなければならない時は、そのようになりやすい。

そしてそれはずるずると先延ばしにしてしまいます。

それを先延ばしにして意識に上らないようにし、期限や締め切りが近くなると急に慌てだす。

これは誰でも経験があることだと思います。

もちろん、そのような時は良い結果が生まれません。

集中モードと拡散モードを行ったり来たりするためには時間が必要だからです。

一度きりの往復であれば、そうたいしたものは出来上がりません。

ましてや、集中モードだけで乗りきようとするのは愚かなことなのです。

その場しのぎでは良い結果は生まれません。

ですがこのようなことを仕方がないからといってあきらめる人もいれば、先延ばしにしないように自分をコントロールする人もいます。

では、そのような先延ばしを防ぐ方法はあるのでしょうか。

著者は言います。

『勉強を始めようとすると多少、憂鬱になるのは自然なことだ。問題は、そういった否定的な感情をどう扱うかである。ある研究では、ずるずると引き延ばさずにさっさと始める人はマイナス思考を追い払い、次のように自分に言い聞かせている。「時間を無駄にしないで、やるべきことをやろう。一度取り掛かってしまえば、気分が良くなる。」』

 実際、やる気というものはやる前にはあまり起きません。

それはやった後になって、はじめて起きるものなのです。

行動を起こすからやる気は出てくるのです。

これは脳科学でも実験されており、やる気と関わるのは脳の淡蒼球という部位です。

この淡蒼球が出す信号が私たちのやる気と関わっているのです。

そして、その淡蒼球を活発にするためには、身体を動かしたり、実際にそれをやったり、行動をするしかないのです。

要するに、やる気なんてものはいらないのです。

やりはじめたら、やる気は湧いてくるのですから。

とはいえ、初めの一歩がかなり困難なのはわかります。

何をするにしてもやってしまえばやる気が出るという経験が少なければ、最初の一歩はとてつもなく高い壁に見えるでしょう。

これにはポモドーロ・テクニックを活用するのが有効かもしれません。

 では引用します。

『やるべきことにさっさと取りかかれる秘訣を挙げよう。まず、邪魔になりそうな音や映像、ウェブサイトを消し、携帯電話の電源を切る。次にタイマーを二十五分にセットし、二十五分間みっちり課題に集中する。その際、時間内に終えられるだろうかとやきもきする必要はなく、せっせと励む。二十五分経ったらインターネットのサイトをあちこち見て回ったり、携帯メールなどをチェックしたりと好きなことをして自分に報酬を与える。自分の努力に報いることは、課題に取り組んだことと同程度に重要である。二十五分間の集中的作業がいかに実り多いかびっくりするだろう。とりわけ課題を片付けることに専念するのではなく、課題そのものに意識を集中すると好結果を生む。作業時間が二十五分間単位の時間管理術を「ポモドーロ・テクニック」という。(略)二十五分間の勉強を一日に少なくとも三回繰り返す。』

 まずは邪魔になるものを見えないところにおいておきます。

携帯は電源を切ってもいいですし、逆にそれが不安になるなら手の届かないところにおいておきます。

そしてタイマーをセットし二十五分間、これに集中すると決めます。

重要なのは二十五分が終わったら自分がやりたいことをするということと、作業を終わらせようと考えるのではなく、作業に集中しようと考えることです。

二十五分間、集中した後にやりたいことができると考えられたら、その二十五分間のモチベーションが上がります。

また、作業を終わらせようと考えるのではなく、作業に集中しようと考えることはとても重要です。

終わらせようと考えると「本当に終わらせられるか」「時間が足りないんじゃないか」とか余計なことを考えて気が散ってしまいます。

ですが、集中しようとすると今、現在のことだけを考えることができ時間を忘れることができます。

過程を考えるのではなく、目の前のことを考える。

未来を考えるのではなく、今、ここをどうするかを考えるのです。

 また、スケジュールを作るのも先延ばしに効果があります。

 では引用します。

『まず、これから二週間、週の初めにその週の目標とする課題を書き出してみる。次に、この週間目標を基に翌日の目標とする課題を四~十項目ほど選んでリストに載せる。リストには当日の終了時刻も忘れずに書いておく。翌日から課題を一つ仕上げるたびに当該項目に線を引いて達成感を味わおう。分量の多い課題は三つ程度に分けると、やる気が持続する。』

 スケジュールをつくれば、「今日は何をやったらいいか」、「何をやるべきか」と考えあぐねる精神エネルギーを使わなくて済みます。

こつこつと今日の分を「ポモドーロ・テクニック」も使って積み上げていけば、いつもより相当作業が進むことがわかるはずです。

今日は何をすればいいか、そのリストを見てやりはじめ、作業が終われば線を引いて消していくと、達成感も味わえます。

 スケジュールを作ることは、さらにもっと良いことがあります。

『前日に課題リストを書き出すと睡眠中に脳はリスト中の項目に取り組み始めるため、本人は課題をどう仕上げるかがおぼろげにつかめる。しかも、前日の晩に課題リストを作っておけば、当日、「ゾンビ」(脳の機械的・習慣的反応)がその気になり、リスト中の項目を消化できるよう協力してくれるのである。課題リストを用意しないで翌日、課題に取り掛かると作動記憶がフル回転する羽目になる。』

 前日のうちに「明日何をやろうか」と決めておけば、無意識のうちに脳の中でその作業を遂行し、整理してくれます。

これも一種の拡散モードです。

そうすれば、次の日実際に取り掛かるとき、効率よく作業が進むことがわかるはずです。