仕事ができる人はメタ認知能力が高い③
メタ認知能力のメリットは三つあります。
一つ目は全体像が分かるということです。
例えば勉強をするときに、まず全体像をざっと把握しておくことで、個々の問題意識やそれぞれのつながりがわかり、関連して覚えることができます。
全体像の中でそれぞれの個別的なことがどういう位置関係にあり、どういう影響を及ぼしているかわかります。
本をはじめて通読したときよりは、2度目、3度目と読み返したほうが、個々の理解度が深くなることと同じです。
これと同じようにメタ認知ができるということは、周り全体を見ることができ、何が重要で、何が些末なものか把握しやすくなります。
私たちが部下の立場で仕事をしているとき、自分の立場ではこれぐらいの仕事の質や量をこなせば十分だという指標がありますが、視点を上げて、自分が上司の立場ならどれぐらいやってほしいかを考えることができますし、さらに上の上司なら、個人だけでなく営業部全体を底上げするような仕事をしてほしいと思いますし、さらに社長なら、と考えて仕事をすることができます。
そうすることによって、立場を超えた問題がわかり、上司の想像を超えた仕事をする人間がたちまち出世していくことになります。
2つ目に、前提を疑うことができます。
例えば、新しい商品を開発してほしいと言われ、それを素直に実行に移すこともできます。
しかし、そもそも現在の会社にとって、新しい商品を開発することは必要なのか、と問うことができます。
新しい商品はヒットすればもちろん会社に莫大な利益を残すことができますが、その分開発経費や人件費が莫大にかかりますし、もし失敗すれば利益どころか赤字が出る可能性があります。
そもそも新しい商品を開発するよりも、既存の商品を伸ばすほうが先決なのではないか、シェアは拡大できそうであるし、そこに人件費を投入するべきではないか、ということをまず問題にすることができます。
こうした答えを出す前にまず、そもそもの問題が本質的かどうかと考えるメタ認知は、間違った問題を立てたことによる時間の浪費と、実質的な金銭面の浪費、どちらにも大きく影響してきます。
まずは前提を問う、本質的な問題かを問う、メタの視点が仕事をする上では必ず必要になります。
3つ目は独創的なアイデアが出せます。
1と2の結果の帰結なのですが、全体像を把握することによって個別の関連がわかり、そもそもの前提を疑うことができれば、独創的なアイデアを得ることができます。
独創的なアイデアとは、0から何かをひねり出すのではなく、個々と個々の関連から多くの場合出てきます。
哲学でいえば、プラトンやカントといった偉大な哲学者を批判し、彼らの考えた前提を疑って新しく問いを立てることで、哲学は発展してきたのです。
哲学者は0から新しい哲学を作り上げたわけでなく、プラトンやカントを必要としたように、過去の偉大な哲学者の前提を疑い大きくなってきたわけなのです。
全体を把握し個々の関連がわかれば、そして前提を疑うことができれば、同僚とは違った視点を持つことができ、違った視点からアイデアが生まれくるということです。
メタ認知能力が重要なのはわかった、ではどうしたらそのメタ認知能力を鍛えることができるのか、次はそこを述べてみます。