睡眠で楽にアイデアを得ることができる
1日にどれくらい睡眠を取っているだろうか?
厚生労働省によると、日本人の15歳以上の平均睡眠時間は459分、約7時間半と言われているが、これを聞いて結構多いな、と思った人もいるのではないだろうか?
私もそう思った。
しかしこれでも世界的に見れば少ない方で、中国では約9時間と調べたら出てきた。
驚くべき数字である。
それだけ寝るのはなんかもったいない気がするが、しかし、やはり睡眠は8時間は取るのが望ましいと思う。
特に仕事で新しいアイデアを出したり、記憶力を良くしたい、と思っている人は8時間は欲しいところだ。
なぜかというと、睡眠を取ることで、昼間に覚えたことを記憶に定着させたり、アイデアを出したりできるからだ。
こんな実験がある。
ネズミにA地点、B地点、C地点、D地点を歩かせる。
A地点に行くと、ネズミのニューロンのAだけが活動する。
B地点に行くと、ネズミのニューロンのBだけが活動する。
C地点に行くと‥‥‥、というように、その地点に行くと、特定のニューロンだけが活動するようにする。
何度かネズミをA、B、C、D、と歩かせ、そのあとに眠っているときの脳を見てみると、浅い眠りの時はA、B、C、D、 A、B、C、D、と現実と同じことを繰り返している、ということである。
浅い眠りの時とは夢を見ている時で、夢の中で何度も現実を反復するのである。
つまり、現実に起こったことを、眠っているときに記憶に刻み込むということだ。
例えば、英単語を昼間に暗記して、しっかりと睡眠を取れば、記憶に定着しやすくなるということである。
逆に、睡眠時間が短いと、当然この反復も少なくなり、記憶に残りにくくなる。
さらに、浅い眠りではなく、深い眠りの時は、このA、B、C、D、の反復のスピードが100倍以上になるそうである。
高速で現実を反復している。
いかに、睡眠が大切なのかがわかる。
さらに凄いことに、睡眠は記憶を定着させるだけではない。
その記憶から、新しいアイデアを生み出す可能性があることがわかっている。
どれだけ考えてもわからなかった問題が、一晩寝て次の日起きると、解決しているという経験はないだろうか?
実は睡眠中、A、B、C、D、と反復しているだけでなく、時々A、D、C、BやA、B、C、Kなど順番を変えてみたり、別のものを付け加えたりしている。
新しいつながりを試している、つまり、新しい発想をしているということである。
アイデアというものは、往々にしてあるものとあるものを組み合わせることで起こる。
それらに関係性を見つけたり、連想したりすることによって、また違った新しいものが見つかるのである。
これを一切の努力なしにやっているのが睡眠である。
もちろん、睡眠のように無意識でやるのではなく、意識的に組み合わせてアイデアを出すことはできる。
物事を抽象化して、これと関係があるものはないか、似ているものはないか、と考えるのである。
具体的なものは、その名の通り個別性なので何かとの関連を考えることが難しく、応用範囲が狭いが、抽象的なもの、言い換えれば本質をつかめば莫大に広くなる。
ただ、睡眠のような無意識のプロセスは、意識的にはなかなかできない遠く離れたものをつなげることができる。
そういった意味でも睡眠は非常に重要なものだ。
しかし、眠れば眠るだけで新しいアイデアが出るわけではもちろんない。
その前の、意識的に考えるプロセスを、それこそ寝食を忘れてやらなければならない。
意識的なことを努力してやった後に、睡眠でA、B、C、K、のような新しいものが出るのである。
何もないところから、Kのようなものは出てこない。
言い方を変えれば、すごく集中した後の、リラックスした時間に新しいアイデアは出るといえる。
何かを考えたり、集中しているときに、新しいアイデアはあまり出ない。
散歩をしているとき、風呂に入っているとき、などリラックスしているときに新しいアイデアが出る。
集中もリラックスもどちらも大切だということだ。
また、睡眠以外にも、このKのような働きが出ることがわかっている。
先ほども書いた、散歩しているとき、風呂に入っているときなど、情報を遮断しているときに、このような脳の働きがあるらしい。
脳にメリハリをつけて活動させることが肝心だというわけだ。