生き延びる力

 私たちはとても変化の激しい時代にいます。

もうすでに、この「変化の激しい時代」という言葉は定型化しており、「未来が予測不可能」というのが予測可能になっています。

次々と社会情勢は変わり、技術は進歩しています。

この時代で、私たちはどうすれば生き延びられるのだろう、ともがいています。

「これからは国家が消滅し、英語なしには生き延びられない」と言われれば、みな英語を勉強し、「今きてるのはプログラミングだ」と言われれば、プログラミングを勉強します。

「AIに仕事を奪われるからどうにかしないと」とみんな同じ方向を向いています。

ただ、この変化の激しい時代に英語だ、プログラミングだ、とこれほど言われてきたら、もうすでにそれらを習得するのが遅いことに気が付いている人も多いはずです。

すでに後手後手に回っており、最初期に情報をつかんだ人だけがそれらを有効に使いこなしているのです。

プログラミングをすでに習得人たちが、「これからの時代はプログラミングだ」と言い、スクールなどを作って先行利益を得ます。

結果、私たちがプログラミングを習得するときには、他の多くの人もプログラミングを習得しており、それで大勢から頭一つ抜けることなどできない、大して役に立たないものになるでしょう。

先行利益とはそういうものだからです。

実は、多くの人は、本当はその他大勢から抜け出したいわけではなく、みんなと同じように生きたいと願っているように私には思われます。

最先端の情報をキャッチアップして、自分は特別な、人とは違った存在になりたいと豪語している人たちでさえも、です。

 高校生や大学生、社会人と仕事をしたり、話したりすると、うんざりさせられることが良くあります。

例えば一緒に仕事をすると、私に認められるためにどこまでやったらよくて、どこ以上はやらなくていいか、かなり必死に見極めようとしているふしがあります。

もちろんはっきりと「最低どこまでやったら、あなたは満足ですか」とは聞きませんが、言葉の端々にそういう方向性が見受けられます。

彼らは無意識にそういう考えが出てくるのだと思います。

ある話を聞いたことがあります。

会社で部下が手持ち無沙汰になったので、上司に「次、何をしておいたらいいですか」と聞いたらしいのですが、言われた上司はほとほと呆れたそうです。

この「何をしておいたらいいですか」というのは、「何をしたら上司は許してくれますか、合格点をくれますか」という意味を含んでいるからです。

「次、何をしたらいいですか」とは意味合いが全然違います。

「私は特にやりたくないけど、何をしたら評価は下がらずに、そして少ない労力でできますか」と同じようなことを言っていることに、彼らは気づいていないのです。

そういったことが、私にもしばしば起こります。

そして、彼らは「これぐらいやっておけば上司は問題ないだろう」という基準を自分で考えだしたりもしますが、だいたいの場合、その判断は間違っています。

60点が合格ラインの試験で、75点はやりすぎで大変だから少し上を狙って63点取ろうと勉強したつもりが、52点になってしまったようなものです。

費用対効果を考えて、無駄な努力はしないことに全力を尽くします。

必要最低限の労力で、無難な成果を上げることに多大な労力を払う、という何をやっているのかわからないことを、彼らはやっているのです。

続きます。