効果的な本の読み方
本の読み方は多種多様だと思います。
この読み方が絶対に良いとは言わないですが、ただ漫然と本を読むよりは効果的な方法というのはあります。
まずは、第一に心構えから話します。
この心構えにも幾通りかの要点があります。
その一つ目は、この本から何かを得ようと心がけて、批判的にも共感的にも読もうとすることです。
ただ漫然と読むのではなく、何かを得ようと心構えをして問題意識を持つことが大事です。
批判的にも共感的にも読もうとするという意味は、中立的に読むということではなく(そもそも中立的に読むとはどういうことかよくわからないですが)著者の立場を批判的と共感的と二通りに読んでいくということなのです。
一つの立場ともう一つの立場を自分の中に持ち、複数の立体的なものを立ち上げる読み方なのです。
そういう複合的な視点を持つことによって、著者の考えに流されてしまったり、自分の固定的な考えに固執してしまうのを防ぐことができます。
ですが、これはなかなか難しいことで、ましてや意味を理解するのに必死な難解な書物ならなおさらです。
ただ、今は著者の考えに共感しているな、と思ったら批判的に読もうと心がけ、今は批判的に読みすぎているな、と思ったら共感的に読むように心がける、という風にバランスを取っていくことが大切だと思います。
二つ目に、本に書いてある内容を自分に取り込むのはもちろん、そこから発展させて自分なりの新しい考えを出そうと努める心がけが大事です。
ここで言う新しい考えというのは、この本の内容には関わらないものでも大丈夫です。
一つの文から全く関係のない別の事柄が頭に浮かんでもいいのです。
いや、むしろその方がいいのかもしれません。
本の内容に触発されて新しい発想が浮かぶというのは、とてもクリエイティブなことです。
そもそもアイデアというのは0から作るものではありません。
ものとものとの関係性の中から出てくるものなのです。
「これは、ひょっとするとあれに活かせるのではないか?」など連想や関連が、しかもそれの隔たりが大きければ大きいほど、よりクリエイティブになるといえます。
なので、これと似ていること、関連があることは何か、と考えながら読むことが大切なのです。
三つ目に、この本を読んだことから、何かアウトプットをするんだという意識を持つことが大切です。
これは一つ目にも通じますが、アウトプットするんだという意識を持つと、漫然と読むことはできなく、重要なところを意識したり、要約したり、内容を言い換えたり、難しいところをかみ砕いて考えたりと、自分なりに吸収することができます。
本をそのままなぞるだけでなく、その本を素材に調理して味付けして、自分なりの料理を作ることが大事なのです。
そして、実際にアウトプットするというのも、とても大事です。
四つ目に、良い本とは答えが書いてあるのではなく、問いや考え方が書いてあると認識することです。
多くの人は今日から使える即自的なものが欲しいと本を読みますが、そういった即自的なもの=答えが書いてあるものは、ほとんどが使えないものなのです。
なぜなら、そういったものは具体的で個別的なものであり、具体的で個別的であるという意味からして応用はきかない、その場限りである、ということなのです。
自分にとって長期的に役に立つわけではなく、自分の血肉とならないものです。
逆に良い本とは、その著者が考えた答えも書いてある場合はありますが、その裏にはもっと本質的な問いが潜まれているということを著者が提示してくれます。
その問題を自分が考えるというのがとても大事なのです。
また、著者が答えまで導いた考え方も非常に重要なもので、そういった考え方は、単に答えを提示されるのとは違って、他のものに応用がきき、何年も何十年も武器として使うことができます。
その考え方を肯定することはもちろん、否定することや乗り越えることでも、その考えがあることによって乗り越えることができるという意味合いで、非常に長く自分の役に立つといえます。
物事の答えより、問いのほうが断然に重要で、本質的で、めったにない貴重なものなのです。